#StopViolence #StopHarassment【04】傷つけるこころと思いやるこころ
■Cさん
コミュニケーションに自信がなくて、人づきあいが苦手な私。何とか就活を乗り越えて社会人初日を迎えた。遅れずに初出勤し、入社式会場の受付でお世話になったリクルーターが笑顔で出迎えてくれてホッとした。
入社式が終わるとすぐに、1ヶ月間の新入社員研修が始まった。最初の自己紹介は緊張で何を言ったか覚えていない。研修中は、新入社員5人のグループで活動する。明るく積極的なⅩさんが自然とリーダー役になる。不安がいっぱいだが、優しいYさんがいるのが心強い。研修は、発言したり、話し合ったりすることが多い。てきぱきとⅩさんが仕切って課題をこなしていく。Yさんや他のメンバーは楽しい雰囲気、私も何とかついていく。
私は、意見を求められてもすぐに言えない。Yさんは「Cさんの意見は?」と声をかけてくれる。頑張って発言するとⅩさんが「そうなんだね~」と簡単にスルーされる。みんなは目を逸らせてⅩさんに調子を合わせ始める。優しく丁寧にゆっくりとハブかれていく。Yさんとの距離が遠くなっていく。
1週間、2週間・・・休憩時間や昼休みも一緒・・・私はそこにいるだけ。学校のときと同じ。教育担当の先輩社員は見て見ぬふりし続けた先生と同じ。邪魔者確定。
(相談事例を参考した創作です)
【この連載について】
職場で体験したこと、大学や研修で学んだこと、相談支援で気づいたこと などを中心に書いている。
ハラスメントが人のこころや体や生活に与える影響、傷ついた方の癒しと再起、傷つける人の心理や向き合い方、人権としてのハラスメント理解、国内外の動き、職場のマネジメントや経営の在り方、人の中にある攻撃性 などいろんな視点から「暴力とハラスメント」を考えていきたい。
目的は、誰もが自分を大切にしながら自分らしく安心して生きることができる社会になること。
ILO『仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約』の批准に向けた動きに合わせて、ひとりひとりが声を上げ、一歩を踏み出し、日本の職場を安全に変える。
暴力やハラスメントに苦しみ、傷つき、悩む方、傷つけることをやめられない方、ハラスメントやいじめを繰り返す職場の方、相談や支援に携わる方、みなさんと共にその根絶を考え、行動したい。
さくらワーカーズオフィスは、傷ついた人の癒しや立ち上がりをお手伝いします。
傷つけることをやめられない人、ハラスメントを繰り返す職場を変えたいと考えている方の相談にも対応します。
「職場から暴力やハラスメントをなくす」活動に関心ある方や何かしたいと考えている方も歓迎します。
人と人の関わりの中にある2つのこころ
「傷つけるこころ」と「思いやるこころ」
人は、生まれてから死ぬまでずっと、人と関わりながら生きる。
そこには「傷つけるこころ」と「思いやるこころ」がある。
人のこころの中に、また集団の中にも、この2つが入り混じって存在する。
「傷つけるこころ」と「思いやるこころ」は、いつも人や集団の中でせめぎ合う。
人は、平和の大切さを掲げながら、武器を持って戦い続ける。
人は、環境の保護を掲げながら、資源を奪い合って地球を破壊し続ける。
人は、人権の尊重を掲げながら、人を差別し、いじめ、嫌がらせを続ける。
人はいつか「傷つけるこころ」と「思いやるこころ」をうまくあつかえるようになるのか。
今はそう信じて、行動し続けることにする。
ふたつの関係性
「モラル・ハラスメント 人を傷つけずにいられない」(マリー=フランス・イルゴイエンヌ 紀伊国屋書店)
「人間関係の中にはお互いに刺激を与える良い関係もあれば、モラル・ハラスメント(精神的な暴力)を通じて、ある人間が別の人間を深く傷つけ、心理的に破壊してしまうような恐ろしい関係もある」
(*)モラル・ハラスメント
コトバンク/日本大百科全書(ニッポニカ)より
フランスの精神科医マリー・F・イルゴイエンヌMarie-France Hirigoyen(1949― )が1998年に提示した概念で、著書では職場におけるモラル・ハラスメントを、「身ぶりやことば、行動などによる不当な行為を繰り返し、あるいは計画的に行うことによって人の尊厳を傷つけ、心身に損傷を与え、その人の雇用を危険にさらす行為」と定義している。
人類の可能性
「暴力はどこからきたのか 人間性の起源を探る」(山極寿一 NHK出版)
「食の共同と性のルールによって生まれた愛と奉仕の心は、その力が及ばない領域を支配する者たちによってすりかえられ、戦争へと駆り立てられるのである。…人々は団結し愛を確かめるために、わざわざ敵を作り、境界を引こうとしているように見える。…霊長類から受け継ぎ、それを独自の形に発展させたこれらの能力を用いて人類は分かち合う社会を作った。それは決して権力者を生み出さない共同体だったはずだ。われわれはもう一度この共同体から出発し、上からではなく、下から組み上げる社会を作っていかねばならない」
人間の良いところと悪いところ
Professor Hawking (Daily Mail Online)訳は山口による
「私が最も正したい人間の欠点は攻撃性です。洞窟生活の時代には、より多くの食料、縄張り、仲間を得るためにメリットがあったかもしれませんが、それが今は私たち人類を脅かしています。大規模な核戦争は、文明を破壊し、人類を滅ぼすでしょう。私が最も大切にしたいのは共感です。共感は、私たちに平和と愛に満ちた世界をもたらすでしょう」
傷つけるこころ
「傷つけるこころ」は暴力、いじめ、嫌がらせとなって、人を傷つけ、苦しめ、悩ませる。
人は、ストレスや疲れや不安から逃れるために、他者を傷つけることがある。
価値観や経験の偏りが原因で、暴力やいじめを「あなたのため」と勘違いすることもある。
人の痛みを理解できず、利益や欲望を満たすためなら何でもやれる危険な人もいる。
■子どもたち
親(養育者)や家族を選べない子どもは、ときに親(養育者)や家族などから暴力を受ける。子どもは痛みに耐えて身近な大人を信じて、そこにとどまろうとする。大人のいじめや虐待は、子どもの命を失わせるほど壮絶になる。親(養育者)が虐待行為を愛情と信じていることがある。虐待する親(養育者)自身が過去につらい経験をしていることもある。
虐待
「身体的虐待の事例」(児童虐待防止全国ネットワーク HP)
「私は物心ついた頃から高校生の頃まで父親からひどい虐待を受けていました。髪をつかんで部屋中ひきずりまわされたり、バスルームで足首をつかんでバスタブに逆さずりにつけられたり、とひどいものでした。しかし、顔面はれあがり、体中アザだらけになって学校に行っても周囲の人は誰も気にとめてくれませんでした。母親さえも、私のことをかばってくれませんでした」
親のいじめ
「モラル・ハラスメントの心理」(加藤諦三 大和書房)
「モラル・ハラスメントをしている本人は、自分がサディストで子どもを、あるいは妻や夫をいじめているとは思ってもみない。自分が子どもや妻や夫に執着し、相手を支配しているとは思ってもみない。…親のいじめ以上にすさまじいいじめはこの世にない。それだけ子どもはいじめやすいのである」
親から受けた傷
「きみはいい子」(中脇初枝 ポプラ文庫)
『たばこでしょ。おんなじ。』
「はなちゃんママは、知っていた。その時の痛みを。消えない親の怒りの跡を。自分の体に刻まれたそのしるしを見るたびに、自分は親に嫌われている、世界で一番わるい子だと思い知る。いくつになっても消えない、世界で一番わるい子のしるし」
■学校
子どもたちは、学校集団のグループや序列に組み込まれる。友達からの暴力やいじめに出会い、悪口、無視、仲間はずしなどの集団いじめも体験する。集団いじめでは、被害者や加害者だけでなく、観衆や傍観者にもなる。子どものいじめは言葉や行動に遠慮がなく、エスカレートしやすい。最近は、SNSやネットでのいじめが増えている。
学校のいじめ
「いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか」(内藤朝雄 講談社現代新書)
「逃げることのできない出口なしの世界は、恐怖である。そこでは、誰かが誰かの運命を容易に左右し、暗転させるこができる。立場の弱い者は、「何をされるか」と過剰に警戒し、硬直し、つねに相手の顔色をうかがってなければならない。そして、悪意のターゲットにされたときの絶望」
スクールカースト
「いじめの構造」(森口朗 新潮新書)
「子ども達は、中学や高校に入学した際やクラス分けがあった際に、各人のコミュニケーション能力、運動能力、容姿等を測りながら、最初の1~2ヶ月間は自分のクラスでのポジションを探ります。この時に高いポジションを獲得した者は、1年間「いじめ」被害に遭うリスクから免れます」
■パートナー・家族
成長ととも恋人や友人を自由に選ぶことができるようになる。夫婦や家族になると長い期間を共に生きる。恋人や夫婦、パートナーとの間で対等な関係を築けず支配関係が生まれると、デートDV、ストーキング、モラハラとなる。恋愛感情が強いと大きな被害を生む。女性被害はジェンダーがDVのベースにあることが多い。離れられずに長期化、深刻化しやすく、表面化しにくい。
パートナーとのハラスメント関係
「モラル・ハラスメント 人を傷つけずにいられない」(マリー=フランス・イルゴイエンヌ 紀伊国屋書店)
「モラル・ハラスメントの関係は、加害者がまず相手を惹きつけるという形で始まり、それから相手の精神を支配し、も暴力をふるうという経過をたどる・・・・・・。」
DVの中の子どもたち
「DVに立ち向かう女性たち」(山口のり子 「女性の生きづらさ その痛みを語る」信田さよ子編 日本評論社)
「DVによる被害を受けているのに忘れられている存在が子どもたちです。DV家庭に育ち、DVにつながる価値観を空気のように日々吸収することを余儀なくされる子どもたちは、DVのない家庭で育つ子どもたちと比べて、将来DV加害者、被害者になる確率がぐっと高くなります」
■職場
職場は、労働契約関係で成り立つ。雇用主・監督者と労働者は〈指示・命令⇔服従〉の関係にある。権力や権限による暴力的な支配がハラスメントを生む。
また、職場集団は、上司⇔部下、先輩⇔後輩、年長者⇔若年者、男性⇔女性、正社員⇔非正規社員、健常者⇔障がい者、日本人⇔外国人といったインフォーマルな関係ができる。人間関係や対立関係、利害関係か複雑に絡み合ったいじめや嫌がらせが起きる。大人の職場いじめは、悪賢く陰湿で、表面化しにくい。いじめが染みついた職場では、ターゲットを変えながらいじめを繰り返し、いつまでも続く。
ビジネスの成功者、経営者、管理職などの中には、特異なパーソナリティを持つ人がいる。共感力を欠き、人を支配し、操ることに長け、人を傷つけることに罪悪感を持たない。このタイプと闘うのはとても難しい。逃げる方法を探すほうがいい。
職場のパワハラ
「パワーハラスメントの衝撃 あなたの会社は大丈夫か」(金子雅臣 都政新報社)
「『あなたには辞めて欲しいんだが、辞めさせるとなるといろいろ大変なので仕方なくいてもらっている』と言われ、全員の集まる会議で『岡田クンのように、目を開けたまま居眠りしている人もいる。こんな人が一人なら、まだ何とかなるが、伝染すると大変なことになる」と言われた」
職場のパワハラ
「大人のいじめ」(坂倉昇平 講談社現代新書)
「Cさんは、担当の虐待を園長に報告した。園長から担当に形式的な注意がされ、さすがに虐待は減った。しかし、それがいじめの発端だった。Cさんは担当から徹底的に無視されるようになり、朝の挨拶や休憩中の世間話はもちろん、園児についての情報共有までもスルーされるようになった。園長にも相談したが、受け流すだけでまともに取り合ってもらえなかった。他の保育士も巻き込まれたくないのか、誰も助けてくれなかった」
職場のいじめ
「モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする」(マリー=フランス・イルゴイエンヌ 紀伊国屋書店)
「ことを複雑にしているのが、モラル・ハラスメントというのが会社の利益を損なう形(特に長期的に)で行われていながら、〈会社のため〉、〈利益をあげるため〉、〈仕事のため〉と、まさにそれとは反対の口実のもとに、巧妙に行われることです。…ことは単純に〈意地悪な社員が弱い社員をいじめる〉という社員同士の個人的な問題ではなく、システムも含めたマネージメントの問題なのです」
人を操る人格
「他人を支配したがる人たち」(ジョージ・サイモン著 勝山勝訳 草思社文庫)
潜在的攻撃性パーソナリティーの特徴
1.つねに自分の思いどおりにすること、相手に勝利することを求めている。
2.他者におよぼす力と支配を求めている。人の上に立ち、人に命じる地位を得ることをつねに望む。
3.偽りとはいえ、礼儀正しく魅力的にふるまい、相手を自分のとりこにできる。
4.恥を恥とも感じないファイター。狡猾で負けをなかなか認めようとしない。人の弱点につけいることに優れ、相手がひるみでもしようものなら、その一瞬を逃さずについてくる。
5.良心は独特の変形を受けている。心のブレーキが欠落している。善悪の区別は知っているが、目的のために良心は棚上げにすることもできる。
6.人に対しては容赦なく、人間関係とは〈搾取するーされる〉の関係だと考える。人は人生というゲームの捨て駒にすぎない。
■戦争
世界は、紛争や戦争を続けている。今このとき、ウクライナやシリアやアフガニスタンなどで人と人が戦っている。武器で人が人を殺し、傷つけ、辱める。言葉で罵り合い、相手を貶める。人類は、常にどこかでだれかを攻撃し、殺し、そしてそれを正当化し続けている。
なぜ戦争するのか
「暴力はどこからきたのか 人間性の起源を探る」(山極寿一 NHK出版)
なぜ、大量虐殺を辞さないほどの苛烈な戦争が人類に起こるようになったのか。それは言語の出現と土地の所有、そして死者につながるアイデンティティの創出によって可能になったと私は考えている。言語は超越的なコミュニケーションを可能にする。…実際には見ていないこと、聞いていないことを体験させ、それを仲間で共有することが可能なのだ。この機能によって、言語はヴァーチャルな共同体を作り出した。国家や民族という幻想の共同体が人の心に宿るようになったのだ」
人類の可能性
「他人を支配したがる人たち」(ジョージ・サイモン著 勝山勝訳 草思社文庫)
「私たちがもつ好戦的な傾向や言動は、人類が生まれながらに宿す邪悪な性質などではない。…もっとも力に勝る者のみが、直面する他民族の脅威を克服し、日々くりかえされる他の集団との争いを制することによって限りある資源を手にしてきた。だが、文明の黎明とともに…攻撃性は、やがてその必要性を失っていく。とはいえ、人類の長い戦火の歴史をたどれば、人間の根源に横たわるこの本能はいまもまだ脈々と息づき、機会をとらえてはその頭をもたげようとしている。」
思いやるこころ
「思いやるこころ」は愛情や慈しみ、育み、助け、協力となって、人を幸せにする。
親(養育者)は、無条件に子どもを慈しみ、愛し、守り、その成長を見守る。
思いやる人は、苦しんでいる人や困っている人に喜んで手を差し伸べる。
見えない誰かや未来を感じることができる人は、ありたい姿を想像して行動する。
他者の利益のための行動は、人を幸せにして自分自身も幸せにする。
■子どもたち
乳を与え、微笑みかけ、言葉をかけてくれる母親たち(養育者)のもとで、子どもたちは育つ。無力な自分の求めが叶えられる喜びの中で愛される存在として過ごす。言葉や態度で対話しながら、人との関わることを覚える。自分と他人の違いを知るとともに、自分と他人を信じられるようになる。
母子の相互作用
「人間発達特論」(住田正樹 田中理恵 放送大学教育振興会
「子どもは、...離乳と排泄がうまくできることを母親が喜ぶことを知り、母親を喜ばせようと自律的行動をとる。つまり、子どもは母親から一方的に愛情を受けるだけでなく、母親に愛情を返すという相互作用が形成されるのである」
親の本能から生まれるやさしさ
「利他性の人間学」(C.ダニエル・バトソン 新曜社)
「(親は)基本的には子どもに身体的な保護を与える。そしてこの基本的な衝動は、その適用される範囲が果てしもなく拡張されても頑張り続ける。…育てたり保護したりするこの情動から、寛容さ、感謝、愛情、憐み、本当の博愛心、そしてあらゆる種類の利他的行動が生み出される。この中に、これらの主要な、本当に基本的なルーツがあり、それなしにこれらはあり得ないであろう」
■学校・青年期
学校では友だちと学びや遊びをともにする。仲間と協力する楽しさや認められる喜びを感じる。考えの違いや争いを経験し、他人を尊重し、助けることができるようになる。欲求や感情をコントロールする力も身に付けていく。
次第に自我が芽生えて、性や個性に悩みながら、交友関係が広がっていく。認め合い、信じ合える存在を探し、親密な恋人や友人ができていく。SNSやネットでの付き合い方にも慣れてくる。
本当の友情
「14歳の君へ どう考えどう生きるか」(池田晶子 毎日新聞出版)
「ありのままの自分なんか見せたら、嫌われるかもしれないって? かわまないじゃないか。ありのままの君が嫌いな人とは、友達にならなければいいだけじゃないか。…君は君の友達が困っているときに、助けてあげるだけの優しさがあるだろうか。それだけ十分にその人のことが好きだろうか。自分が困っている時は助けてほしいけど、相手が困っている時は助けてあげない。これじゃとても友情とは呼べないよ」
思いやる
「9歳のこころのじてん」(パク ソンウ文 キム ヒョウン絵 清水知佐子訳 小学館)
【他人を自分と同じくらい大切に思う】
「おこづかいでほしかったシールを買おうと思ったけど、お母さんのためにヘアピンを買ったの」
■パートナー・家庭
いつかパートナーや家族と生活をともにするようになる。夫婦間、家族間や周辺の様々な関係で生じる出来事を協力して乗り越えて、関係性を深めていく。長い期間の中でその関係性は常に変化し続ける。次の世代(子どもたち)を愛情深く育む養育者としての役割も果たす。
幸せを感じるとき
「人間関係の心理学」(斎藤勇 誠信書房)
「一番幸せを感じるときはどんなときか、という世論調査がある。その答えが一番多いのは、友人と一緒にいるとき、恋人と一緒にいるとき、家族と一緒にいるとき、などある。人は、親しい人と一緒にいるときが一番安心でき、くつろげ、幸せを感じるというのである」
けんかする夫婦
「より道 わき道 散歩道」(河合隼雄 創元こころ文庫)
「よく喧嘩するくせに仲のよい夫婦というひとたちがが世間にはいますが、こうした夫婦は対立しながら支え合っているのです。ですから、片方が亡くなると、相手も後を追うようにしてほどなく亡くなってしまうということがありますが、これも『対立しているということは、反面支え合っている」という証明でもあるのです」
■職場
職場では、ひとりの社会人として他者の利益のために働く。上司や同僚と関わりながら、組織の目標に向かって能力を発揮することにやりがいを感じる。役職や年齢、性、国籍、言葉、雇用形態、障がいの有無などの多様な人と出会い、互いを認め、助け合っていく。仕事を通じて自己の成長や存在価値を実感することにもなる。
仕事と家庭、友人関係、地域活動、自己啓発、趣味などのバランスをとりながら、人生を充実させていく。
集団に参加する魅力
「人間関係の心理学」(斎藤勇 誠信書房)
【集団に参加する5つの魅力】
①集団の活動それ自体の魅力
②集団の目標に対する魅力
③集団の持っている社会的価値への魅力
④集団が自分の目標の達成手段となる魅力
⑤集団の人間関係の魅力
利他の心
稲盛和夫(オフィシャルサイトより)
「私たちの心には『自分だけがよければいい』と考える利己の心と、『自分を犠牲にしても他の人を助けよう』とする利他の心があります。利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰の協力も得られません。自分中心ですから視野も狭くなり、間違った判断をしてしまいます。一方、利他の心で判断すると「人によかれ」という心ですから、まわりの人みんなが協力してくれます。また視野も広くなるので、正しい判断ができるのです。より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた『利他の心』に立って判断をすべきです。
思いやりに満ちた仕事
「思いやりはどこから来るの? 利他性の心理と行動」(日本心理学会監修 高木修・竹村和久編 誠信書房)
「人には生来、利他的になり得る何かが備わっているのではないか。そしてそれが思いやりによってひとたび発動するとビジネスの現場はさらに思いやりに満ちたものになります。それが、さまざまな形で、ビジネスに『愉しさ』を運んでくるのです」
世界は、「平和」と「人権」を不可侵の基本的価値として共有できる。
地球と人類を持続させていくためにすべての国と地域が力を合わせることができる。
利害や意見や価値観が対立したときは、話し合って解決することができる。
分断する世界と希望
「私は分断を許さない」(堀潤 実業の日本社)
「限界は近くなった。人間同士の距離は縮まった。
はすだった。しかし、至るところ分断は起きている。
こんな世界を誰が望んだのだろうか。
それでも、希望はあるはずだ。
諦めるわけにはいかない」
ダイアローグとディスカッション
「ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ」(デヴィッド・ボーム著 金井真弓訳 英治出版)
「ディスカッション(議論)はピンポンのようなもので、人々は考えをあちこちに打っている状態だ。そしてこのゲームの目的は、勝つか、自分のために点を得ることである。…しかし、対話(ダイアローグ)では勝利を得ようとするものはいない。…対話では点を得ようとする試みも、自分独自の意見を通そうとする試みも見られない。…人々は互いに戦うのでなく、『ともに』戦っている。つまり、誰もが勝者なのだ」
人は人を傷つけることも、思いやることもできる。
いじめや嫌がらせ、ハラスメントで傷つくことは、誰にでも起きること。
あなたが悪いのでも、ダメなのでもない。
つらいときや困ったときは、話を聴いて、思ってくれる人が必ずいると信じていい。
人で傷ついたこころは、人の思いやりで必ず立ち直れる。
特に危険なタイプの人が相手の時は、急いで誰かに相談して。
いじめ、嫌がらせ、ハラスメントと感じたとき
★起きたこと、されたことを記録する
★ぜったいにひとりで我慢しない
★悩みやつらさは信頼できる人(家族や友人)や信頼できるところ(さくらワーカーズオフィスなど)に相談する
★職場(上司や相談窓口など)に相談する
★職場に相談できないときは外部の相談窓口(総合労働相談センターなど)に相談する
★暴力や暴言などの犯罪行為は警察などに相談する
★損害賠償の請求や交渉は弁護士などに相談する
「ハラスメントなのだろうか」と考えて、我慢していませんか?
「私が悪い」「私の努力が足りない」と自分を責めていませんか?
「眠れない」「気分が落ち込む」「吐き気がする」「動けない」という変調はありませんか?
どこに相談したらいいかわからずに困っていませんか?
おかしいと感じたら、勇気を出してすぐに相談しましょう。
【第5回】に続く
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内容は随時更新、変更することがあります。
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