「夜が明ける」(西加奈子 新潮社)
西さんが祈りを込めて書いたという1冊。
アキと俺が15歳高校で出会ってから2016年に33歳迎えるまでの話。
彼らが生きた21世紀の日本社会をドキュメンタリーのように描き出す。
《本屋大賞2022ノミネート》
貧困、虐待、ヤングケアリング、マイノリティ、ハラスメント、過重労働、シングルマザー、暴力。
ここに書かれていることが今このとき、そこらにたくさんあることに気づく。
読み進めていると自分の過去や今の苦しさがよみがえる。
息が詰まり、胸が苦しくなりながらも一気に読む。
苦しさの中に必ず希望がある。
毛布と暖炉の温かさの中でアキが僕に送った言葉。
夜が明ける。
素敵な言葉だと思う。
夜が明ける。
みんなの夜が明けるんだよ。
君にも教えてあげたい。
NHKのインタビューでどうしてこの本を書いたのかを問われた西さんは
『自己責任という言葉が年々、年々鋭角を増して鋭利なものになって、「自己責任」という言葉が日本の「恥の文化」と結びついて、年々年々、人を苦しめているように感じる』と話す。
この本で描かれているのは2016年まで・・・その後・・・
「障害者は社会にとって迷惑だ」と主張する男が障害者19人を殺害した。
フリージャーナリストが実名で強姦被害を告発した。
総理大臣らと親密な関係にあった学校法人への土地売却書類改ざんにかかわった財務省職員が自殺した。
引き出し屋と呼ばれるひきこもり支援団体に暴力的な方法で連れ出された男性がアパートで餓死した。
厚生労働省と国土交通省の職員は、統計の不正に気づいていたが誰もやめなかった。
元患者が大阪の心療内科クリニックに放火し、26人(元患者本人含む)が死亡した。
社会は年々年々・・・今も歪み続けている。
「自己責任」という冷たい言葉ばかりの社会にもぬくもりが必ずある。
ときに助けられ、ときに手を差し伸べながら、今を生き延びよう。
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